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コラム

不思議な夢

 バターン、コツン、コツン、コツン、閑静な住宅街の古びた木造アパートの二階の角部屋を出て、赤茶色のペンキが殆ど剥げ落ちた鉄製の階段をその男は降りてきた。
 口元に髭を蓄え、山高帽をかぶりウールのコートに茶色の皮の手提げ鞄を持つ、懐中時計が似合いそうな、まさに昭和初期の大学教授風の四十歳位の紳士である。
 男の背に、木造アパートの二階の窓から物憂げに手を振る、軽くウェーブのかかった長い髪を背中までたらした細身で長身の女性、男の連れ合いと思われる。
 男は振り帰り上を向いて顎を少し下げ、口で「行ってくるよ」と合図しているようである。
 アパートを出て細い道を、右に数百メートル落葉樹の多い住宅街を過ぎると景色は古びた商店街に変わり、更に二十メートル程歩くと駅前の少し賑やかなところに出た。
 歩いてきた細い道では、自転車とすれ違うだけで人通りは殆どない。
 駅前は、細い道が広い通りに合流する形で二叉路のようになっている。
 広い通りも走っているのは、殆どが自転車とリヤカーと馬車で自動車は数台しか走っていない。
 細い道が広い通りに合流する所の右手に駅がある。
 駅舎は、すすけた茶褐色の、一部が煉瓦でできた木造である。
 入って正面が、ガラスの一部に丸い穴の開いた下からお金と切符を交換する昔風の切符売り場になっている。
 切符の自動販売機は当然見当たらない。
 不思議なことに切符売り場の左には、建物と風景と時代に似つかわしくない、下へ降りる為のエスカレーターがある。

 これは、私が何度となく見ている不思議な夢の一部です。
 アパートからここまでの全てが、朝焼けか夕焼けのようなセピア色のdioramaを上から私が見ている夢です。
 この男、実は私自身なのです。

 男は駅に入り改札口を通ることもなくエスカレーターに乗る。
 乗るとすぐに天丼が下へ降りてきて男を押しつぶす、死ぬほど押しつぶす訳ではないが、ただ息苦しく、もがき苦しむ。
 dioramaを上から見ていたはずの私自身が、いつの間にかこの男になり、真っ暗な中で、もがき苦しんでいる。
 しかし、降りてきた天丼は暖かく柔らかい。
 かなり時間が過ぎ、突然明るいところに転げ落ちた。
 押し出されたと言ったほうが正しいかもしれない。
 そこは、周りにビルが立ち並び、騒然とした人々のざわめきと生活を感じる駅のホームでした。
 セピア色だった風景が一変して総天然色の世界に変わっています。
 セピア色の世界へ無性に帰りたく、振り返つてもそこにエスカレーターは無い。
 後ろ髪を惹かれる思いで、涙を流しながら、電車に乗り込み現代の世界へと消えて行く。

 以上が私の幾度となく見る「不思議な夢」のすべてです。
 信じて頂けないかもしれませんが、エスカレーターは、母の産道、セピア色の世界は私の前世での最後の一日ではないかと勝手に考えています。
 今でも、軽くウェーブのかかった長い髪を背中までたらした細身で長身の女性を見かけると振り返ってしまいます。

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